2011年6月19日日曜日

衝突の多いミロンガについて

アジア大会の興奮冷めやらぬ中、
風邪でダウンしてしまったので、ミロンガにも行かず、
久しぶりにタンゴのことでも考えることにした。


楽しめる・楽しめないの話は置いといて、

衝突が多いミロンガというのはどういうことか?
それも最近、気になるという人が増えているから、考えてみたいと思っていた。


衝突が多いミロンガというと、実際にミロンガで出くわすと、大雑把な理由は思い当たるものの、
具体的に何が要因である可能性が上がるのか?


タンゴダンサーというものは、
前後左右に自由に動くことができると言われているが、

ミロンガにおいては、
①反時計回りになだらかに動きながら、
②リーダーの周りをフォロワーが一定の距離を置いて動いている
ということなので、

単純化して①と②の動きだけを考えてみる。

以下、

①をミロンガの踊り場に沿って発生する対流の「ドリフト運動」
②をリーダーの周りをフォロワーが動く動きを「ジャイロ運動」

と呼ぶことにして、
タンゴダンサーの動きは、この2つの足し合わせであると仮定する。



A) 「ドリフト運動」に着目した、衝突の可能性と予防策について


まず、ドリフト運動だけに着目して一つの絵を描いてみる。



ものすごくきっちりしたロンダを描く理想的なミロンガの場合、
何となく踊り場の外枠の形を気にしながら、こんな対流が起きそうな気がする。

長方形であれば、最低の1重の対流が起きるし、
正方形に近ければ、何重にも対流が起きることが予想できる。


まず、このドリフト運動が原因として衝突が起きる可能性、について考えてみる。

一つ目に考えられるのは、このドリフト運動のムラ(ばらつき)(※A-1)だろう。

例えば、踊り場にペアが10組いるとして、
体慣らしに10ペア全部が一歩ずつ時速2km/hで歩いている状況を考えてみたときに、
全員が均等に歩き続ければ、当然ずっとそのままみんな歩くことができる。
だけれども、1ペアだけが時速3km/hで歩けば、それだけで衝突が起きるかもしれない。

さすがにそんなにミロンガで直進ばかりしている人たちはいないと思われるが、私の場合、ダリエンソやビアジばかりかかるミロンガなんかは、どうしても直進したい衝動に駆られることもある。あるいはためてためてズンと進むような曲なんかは、激しく大きな一歩で直進したい場合がある。


直進しなくても、「渋滞」のような状況なら実際に起きている。

一般的に、自動車の渋滞は、運転者自身は一定の速度を保っていると思っているけれども、傾斜の変わり目などで起きやすいとされている。
ミロンガについても、おそらくこれに似ているのだと思う。たとえば劇的に曲調が変わる曲、解釈に幅がある曲、などは、普段良く行くミロンガの選曲傾向やダンススタイルの違いが大きく影響すると予想される。こういう曲を、ある程度混雑しているミロンガでかけるとアウトだと思う。

(A-1)について考えられる、主催者側・ダンサー側の対応策。

主催者側:混雑状況とダンサー嗜好・ダンススタイルに応じた選曲。
ダンサー側:できるだけ曲に流されずに、一定の速度で対流を守ろうという気持ち。


ドリフト速度のばらつき、2つ目としては、左右への自由度の高さ (A-2)だと考える。

たとえばさきほどの「理想的な」対流の上で、
ダンサーが踊ったとするならば、どうなるか?

というのが次の絵になる。




実際に踊られる方なら分かる通りで、
ロンダを厳密に守ろうと思わなければ、
横が空いていたら出てみたくなるかもしれない。
対流が2重・3重・・・と多重になればなるほど、左右に行く自由度が増す。

左右および後ろへの移動は、死角も多くなり、
極力避けたほうがいい、というのも当たり前の話。

理想的な踊り場の形状については、
幾人かの日記でもあった通り、
長方形が良いとされるのは対流の形だと考えて特に違和感がない。


(A-2)について考えられる、主催者側・ダンサー側の対応策。

主催者側:できるだけ左右の自由度を減らす踊り場の形。
ダンサー側:できるだけロンダを守ろうとする気持ち。


A-1)とA-2)への最善の努力をして、対流が理想的にできれば、
それ以外のダンススタイルがどうとか、選曲がどうとか、というのは最小の影響になるのではないかと期待している。

特に、主催者の手の届かないことがあるとすれば、
それは、ダンサーは対流の速度とLODをたもつということであり、
そういうことは一人のダンサーとして意識したいものだと思う。



B) 「ジャイロ運動」に着目した、衝突の可能性と予防策について


もっとも、曲に合わせて多様な動きを表現するのもタンゴの醍醐味であるから、
「対流を守ること」と「多様な動きを楽しむこと」はトレードオフである。

そのサジ加減については、ミロンガごとにどういう雰囲気を求めるのか、
ということになると思われる。

ミロンガの主催者が予め情報を公開していないとすれば、
それは後に問題になるかもしれないので、踊り場作り・選曲の両面で慎重に考えたいところだと思っている。


たとえば、以下にTokyo Tango Cityでの例を挙げる。

11日にはじめた La Cadencia @ Tokyo Tango City では、
予め 4m x 6m という長方形を利用して、一重の対流を描くことを念頭においた。





今回のミロンガでは、結果的にセントロの混み具合には程遠かったものの、
平均的に10ペア程度が半径1mの動きをできるペアで賑わった。

報告があがっている中では、
衝突がやはりあったり、狭い間から追い抜かれた、などという例があったが、

踊り場作りと選曲側でどのような工夫ができるか、どのようなトラブルの回避ができるのか、
これから試行錯誤していきたい。


また、中目黒GTホールでの例を考える。

たとえば最近のミロンガでは、12m x 10mという正方形になっている。
対流セルの大きさは理論的には 2.5mで、2重の対流が起きると予想している。




人数として80人~100人。同時に踊るペア数としては、20~40という物であるが、
もちろんLa Cadencia に比べると、かなりゆったりしていることが分かる。

基本的にTokyo Milongaなどはトラディショナルが多めなので、選曲面では十分な配慮があると思うが、
なんとも正方形なのは難しいなぁと最近よく感じる。
それが、形のせいなのか、ある特定のダンサーのせいなのか、よく分からない。

この場所は少人数でヌエボとかでガンガン縦横無尽にやるミロンガの方がやりやすいのだと思う。


長くなってしまったので、これ以降の検討はまたの機会に。