2013年8月24日土曜日

ネコでもできるタンゴDJ’2013

前回、タンゴDJについて書いたときから3年くらいたったのですが、

タンゴDJ、

というのは結局タンゴ場を愛することなんだ、
と分かったので、久しぶりに書いてみようと思います。


ちなみに3年前に書いたというのは、↓こんなものです。

タンゴのDJに思うこと’2010
http://sacadaenborde.blogspot.jp/2010/10/dj.html


タンゴDJは、必要以上に難しく考えられていたり、逆に軽んじられていたり、
はたまた俺には関係ない世界のできごとであるかのように語る人もいますが、
ミロンガでは、とても当たり前でありながら、大切な役割だと思います。

ミロンガのような、タンゴ場を愛する人であれば、タンゴDJにトライしてみて欲しいです。


自分たちは、
Rueda de Tango などという謎のペンネームを使って
名前を伏せてタンゴ場の選曲をやらせていただいてますが、

自分たちにとっては、タンゴ場にどんな音楽が相応しいのかということを考えるための、思考実験です。

自分たちは、プロのタンゴDJになろうとしているわけではないので、
どこぞの人の書いた文献などには頼らず、外国から来たプロを名乗るDJなどにも頼らず、
ゼロから自分の力で、タンゴ場について考えることを拘りたいと思っています。


大昔であれば、
ミロンガのようなタンゴ場でレコードなどを切り替えながら、
その場に合わせて選曲するということは、それなりに知識や操作技術を要する仕事だったのかもしれません。

今のように、タンゴ楽曲も Amazonみたいなところから簡単に手に入って、

パソコンなどで加工や事前のシミュレーションなんかが簡単になっている時代では、
通常のミロンガでの選曲すること自体についてのリスクは著しく減っていて、

わざわざプロを名乗って独自の商品化を行っているタンゴDJよりも、
もっと当たり前の、ミロンガの場づくりのためにオーガナイザーと共に骨を折れる人間が求められています。


タンゴDJは、ミロンガにおいては大切な役割ですが、

当たり前体操みたいなものなので、

そこそこの楽曲のコレクションと、
タンゴダンサーとしてのふつうの感覚があれば、
誰にでもできるし、

もしかしたら、ネコでもできるんじゃないかな。


ちなみに、サルでもできる、って書こうとも思いましたが、
サルができてもあまり嬉しくないかなと思ったのでネコです。


① インプロの度合い

はじめに、少しだけ難しいことを。

インプロ(インプロビゼーション)という言葉がありますが、

タンゴの演奏やダンスは、ある程度のアドリブを使って楽しむもので、
人によって、求めているインプロの度合いが違うこともよくあり、
その考え方の違いによって、踊りやすい、とか、タンゴらしい、とかいう感覚の部分は、
人それぞれの主観によって変わるものだとは思います。

だからこそ、あるダンスイベントのオーガナイザーは、
意図する・しないに関わらず、ある程度、その場の前提となるようなインプロの度合いを設定していて、

ダンサーは、その作りだされたダンス場の元で、
その音楽・その人が創り上げる空間・時間を楽しむことができるのだと思います。


今回は、タンゴDJと一重に言っても、ある程度幅があるので、
だいたい下の図①の青リンゴのあたりを、インプロの度合いとしてイメージしてもらえたらと思います。



つまり、まったくの場当たり的な音・踊りを求めるわけではなく、かと言って、予め予告されて振り付けされたような音・踊りでもないというような程度の話です。


② よく知られた曲

タンゴの曲が何曲あるかは知りませんが、
人によってCDを持っていたり、持っていなかったり、聞く曲にも当然違いがあります。

それと同じように、ミロンガなどタンゴ場でかかるタンゴの曲にも、ばらつきがあって、
その結果、よく知られた曲や、あまり知られていない曲があります。

タンゴの曲すべてを考えると、タンゴの曲がダンサーに知られている度合いは、
おおざっぱに図②のように書けるかと思います。



同じ曲でも、違う演奏者が演奏していたり、同じ演奏者でも違ったバージョンの演奏などもあります。

ただ難しいのは、自分が知っているからと言って、よく知られた曲とは限らないことですよね。


③ ある曲を知っているダンサー


図③は、図②と同じことについて、少し違う書き方をした図で、すごく当たり前の話ですが、

あるミロンガで、誰もが知っている曲をかければ、知っていると手を上げる人が多いでしょうし、
あまり知らない曲をかければ、知っていると手を上げる人は少ないでしょう。



ミロンガに、そこそこ人がいれば、自分の知っている曲を知っている人と巡り合う確率も増えてきそうです。



④ 知らない曲でも踊れる相手


同じ曲でも、よく踊っている人や、同じ先生に習っている人みたいな相手だと、
あまりよく知らない曲で踊れたりします。

図④は、そんなことを書いた図です。

気のしれたメンバーで集まった内輪のミロンガだと、わりと曲は何だって踊れるんですが、
まったく初めて行く、たとえば初めて行く外国のミロンガなんかだと、そこそこ知っている曲で踊りたいかもしれません。

あるいは、オーガナイザーの主旨によって、敢えて知られていない曲なんかを楽しむ会なんかもあるかもしれません。




⑤ 結果的に踊ることができる曲数

たくさんの曲数を踊れれば満足するとは限りませんが、

踊りたい!と思う時に、
踊りたいと思う曲がかからなかったり、
踊りたい相手がいなかったりすると、
がっかりします。

まずは、踊りの選択肢としてたくさんある方が良いと思うかもしれません。


内輪のミロンガでは、どんな曲でも気のしれた相手がいるので、少人数でも踊れるわけですが(0人だとさすがに無理だけど)、
初めて行くタンゴ場では、そこそこ全体の人数が来ていないと踊れないことが予想できます。

図⑤には、そんなものを書いてみました。



外国からも人が来て楽しんで欲しいミロンガや、国際的なイベントなんかでは、
初めて来る人にも楽しんでもらえることを願うならば、当然知られている曲をかけた方が良いのだと思います。


ただ、タンゴDJも、タンゴダンスと同じで、
シンプルが一番むずかしいと思います。

①~⑤の、こんなところだけでもイメージしながら、
持ち合わせの曲で2~3時間の選曲をしてみると面白いと思いますので、是非やってみてください。


誰もが知っている曲を並べていけばいいんですけど、
誰もが踊りたくなる曲というのを求めていくのは、追求すればするほど奥深くて、
それはミロンガなどで自分でつかんでいくしかない。

これっていうのは、タンゴダンスやタンゴ場に自分がいて楽しもうということと同じ気持ち、
タンゴ場を愛するということに通じることだと分かってきました。

決して独りよがりでない、タンゴ場を共に創り上げる気持ちなんだと思います。



最後に、余談ですが、タンゴ演奏についてもちょこっと書いてみます。


余談 生演奏ミロンガについて

人によっては、生演奏は楽しいけど踊りにくい、と言われます。

生演奏は「人によって、おなじみの曲ではあるけれども、違う演奏」か「知られていない曲」が中心なので、
単純に図にすると、以下のようになるかと思います。



単純に考えるなら、生演奏で踊る人に興味がある人が集まるか、
もしくは、ある程度、タンゴダンサーに知られた曲を演奏するようなタンゴ場があれば、盛り上がるような気がします。


きっとミロンガでのタンゴ演奏も、
タンゴDJと同じように、ミロンガに通い続けて、ミロンガ演奏を続けてつかんでいく、
奥深いものがあると考えています。

ライブのつもりで一方通行のタンゴ演奏が、何か空虚な感じを覚えるのと一緒で、
きっとタンゴ演奏というのは本来、タンゴダンスがあっての物だと信じています。

ダンス場での生演奏と、CDなどによるタンゴDJを、
ひとくくりに語れるものではありませんが、

以前、高場さんの演奏を聞いて思ったことを、改めてここに書きたいと思います。

タンゴDJも、タンゴ演奏も、タンゴダンスと一体になった伴奏なんだということ。

良かったら、古い文で恐縮ですが、下も読んで下さい。

ダンスの演奏 について思うこと ’2009
http://sacadaenborde.blogspot.jp/2009/12/blog-post_26.html